夏になった
あの日以来、どうしてだか桜ノ宮君の事ばかり気にしてしまっていた
別に恋愛方面とかそんな疚しい感じではなく 、ただ純粋に彼の事が知りたかった
人見知りを克服しようという名目で何度も彼に話しかけてみた
それが切っ掛けとなったように僕達の距離は一段と縮まった

「琉祈亜ー、帰ろー?」

「あっ、綾君待ってよっ!!」

名前呼びに始まり、登下校だけでなく休み時間も一緒に居ることが多くなった
僕の人見知りが克服していくにつれて綾君は自分の友達を沢山僕に紹介してくれた
今ではクラスメイトであれば自然と会話したり冗談を言い合えるほどになったくらいだ

…話がそれてしまった
距離が縮まりはしたのだけれど、やはり綾君の笑顔以外の表情を見ることは一度もなかった

どれだけ近づいてもそれは外面的な距離でしかない
彼の心に踏み込むなんて、不可能に近いと悟った

「…琉祈亜、どうかしたの?」

心配そうに僕の顔を覗きこむ綾君
僕は彼みたいに仮面を被るのは上手くないけど、そっと笑顔を作って大丈夫だよという

彼を騙すことはまず出来ないけど、彼の仮面を外したい一心で僕は…

「…綾君、もう一度聞きたいんだけどね?」

突き放されるかもしれないことを覚悟して何度でも問いかけてみる