名前なんてただの上辺だけのもの。そんなことは分かっていた。 それでも、上辺だけでも、ギリギリまで繋がっていたかった。 「……高梨。よろしくな」 「うん」 わたしは微笑んだ。 名前を付けてしまったら尚更この先離れるのが辛くなるけれど。 斎藤くんが離れる決断をしたのなら、わたしは……今を大事にする決断をする。 そして、それを思い出にする決意を。 あと数日間という短い時間の中で、わたしと斎藤くんの関係は『恋人』になった。