俺達の住む街は
海が綺麗で有名だ。


夏になると観光客が絶えないし
いいデートスポットだというのも
有名である。


俺達は海に着くと
岩がたくさん重なってるところに
座った。

ザザーン...ザザーン...


波の音が俺達の耳にこだまする。


「懐かしいな」


そう颯太はつぶやいた。


「ん」


「よく来たよな。小学生の頃だったかな。泳ぎまくって日焼けしまくってさ。皮がむけて大変だったよな」


颯太は海を見ながら
まるでそこにガキの時の俺らがいて
それを穏やかに見守るような感じで話をした。

「よくそんなこと覚えてんな」


「そりゃあ、いい思い出だから」


「ふーん」


素っ気なく返事をしたけど

『いい思い出』と言われたことが嬉しくて
俺はひとり心を踊らせた。


あの頃に戻りたい。


楽しかったあの日々に。



いや...違う。


戻したいのは...俺の心。



この気持ちが恋だということに
気づいてなかった頃の俺の心に。


今でも気づいてなかったら

颯太に彼女ができても
悲しくなかっただろう。




涙なんて出なかったたろう。



どうして気づいてしまったんだろうか。



考えても無駄なのに
考えてしまう俺は


それほど颯太を好きだということを
わざわざ思いしらしめるつもりなんだろうか。



「颯太」



「ん、なんだ?」



「俺はお前にとってどんな存在?」




ザザーン...ザザーン...




絶えることなく響く波の音は
俺の想いを加速させた。