「…へぇ〜、あんた武内っていうんだ」
男はあたしのネームプレートを見つけたようで、笑いを含んだ声で言った。
…その笑いというのが、良い意味ではなく、人を馬鹿にしたような感じだった。
ネームプレートなんて、そんなのたやすく見つけられるんだけど、
…あたしとしては一番知られたくない情報であった。
「…そうですけど…」
あたしがそう言うと男はニヤリと笑った。
「あんたって太ってるわりに胸は寂しいんだな」
「…はい…ッ!?」
突然放たれた言葉にあたしは衝撃を受けた。
太っ…!?
…こいつ、今何て言った!?
物凄く失礼なことをサラリと言われた気がするんだけど!
ここでようやく早田がペットボトルの値段を男に告げた。
…何年ここで働いてるんだよ…早田…。
男はスウェットのポケットから小銭をジャラジャラと出し、早田がそれを拾い上げた。
勘定を済ませた男はペットボトルを手に取り、出口へと足を進めた。
「ありがとうございました〜」
あたしと早田が声を揃えて言う。
やっと帰ってくれた…!
本当、失礼な奴だったな。
この辺に住んでるのかどうか分からないけど(むしろ、どうでもいい)、もう来ないで欲しい…。
あたしが内心ホッとして顔を上げると、出口に向かったハズの男が何故か振り向いて、
「言うの忘れたけど、アンタ、その化粧似合ってねぇよ。見てるこっちが恥ずかしいし」
と、意地悪そうに笑い、男は今度こそ出口に向かい、自動ドアの向こうに消えた。


