「えっ……」


 あたしは透の放ったその言葉に驚いて、思わず透の顔を見る。



「……っ」


 その顔を見た瞬間、胸がドキッと大きな音を立てた。

 それは、センセイを見て鳴った音と全く同じで。


 それが不思議だったのももちろんあるけれど、そこまで気にならなかった。

 だってそれ以上に、透の瞳の切なさが心の奥まで刺さったから。


 透の言葉からして目の前にいる美人は、透のお母さん。

 つまり、透がずっと想っている人。


 透がお母さんの話をするときでも、こんな悲しい顔はしなかった。

 透が、お母さんだけに見せる顔。



 その顔は、あまりに儚く悲しく切なくて。

 だけど、あまりに綺麗で優しい。


 あたしの心音は、大きくなっていくばかり。

 あたしの胸は、苦しくなっていくばかり。


 ドキドキした。

 チクチクした。


 複雑な思いが、感情が、何度も交差した。



 そんな思いを抱えながらじっと透を見つめていると、

「あれ?貴方は……」

 透のお母さんの瞳が、あたしを捉えた。


 その声にあたしは透を見つめるのを止め、視線を透のお母さんへと移した。



「ど、どうも……」


 それにしてもこの人、緊張するくらいの美人さんだ……。

 どうしよう……。