家に帰りつき、今日から須賀さんが泊まり込みなので客室の片付けをすることになったのですが、自分の部屋の片付けもしたい。

でも、滅多にお客が泊まるなんてことないから客室は一応キレイだけど、ほこりが…。

布団を干して、部屋の掃除をして、須賀さんは持ってきた着替えなどを整理している。

できる限りはここに泊まるらしいけど…アイドルって忙しいものでしょ?

ルーメンの番組だって毎週あるし、雑誌などの取材だってあるだろうに…私なんかの世話に来ていていいのかな…。



「どうしたの冬祢ちゃん?」



じっと須賀さんを見ていたせいか、須賀さんがどうしたのかと聞いてきて、私は何も言わず顔をそらした。

なにか可愛いげのあることでも言えればいいのだろうけど…生憎と人と接するのが苦手なのでそんな可愛いげのあること言えるわけない。

そんな自分にため息が出た。

世間一般の女性はこの状況を羨ましがるだろう。

けど、私にとってこれは試練なのだ。

人と接するのだってうまくできないのに、異性でアイドルと接するなんて…どんだけ高レベルなんだ。



「冬祢ちゃん、片付け手伝ってくれてありがと」



須賀さんはそう言ってまた私の頭を撫でてくれた。

他人ってなに考えているかわかんなくて怖いと思っていたけど、須賀さんは怖くないなと思った。

優しいふりをしているだけ、事務所の社長の娘である自分に優しくしていれば得すると思っているんだ、なんて嫌な考えが脳裏をよぎるけど私はそれを忘れようと頭を振る。



「頭、撫でられるの嫌だった?」



頭を振ったことで須賀さんは勘違いしてしまったようだ。

私はすぐに違うと否定するように首を横にブンブン振る。



「そっか」



ブンブン勢いよく振った私を見て須賀さんは笑ってくれた。

誤解されずに済んだとホッと息を吐き、片付けする手を再び動かす。

使われない客室は物置状態にもなっていたから掃除機とかをちゃんと片付けていたらあっという間に夕方になっていた。

普段からお昼は食べない私だけど、須賀さんはお昼抜きで片付けていたからお腹をすかせているだろうな。

夕飯のカレー作ってあげようと思うと同時に、どうしてだろう、と思った。

数時間前に出会ったばかりなのに、私は須賀さんに対して苦手意識を持たなくなっている。

普段は他人と距離を取りたがる私なのに…。

テレビでよく見かけるから身近な人と勘違いでもしているのだろうか?


このときの私はそう考えていた。