キミの笑顔の理由になりたい

 
須賀さんはフルーツが置いてあるところに行ってぶどう、というかデラウェアを取ってきた。



「なんかふと食べたいなって思っちゃって」



照れ臭そうに言う須賀さんは多分ごく一般的な女性が見れば可愛いと思うのだろう。

私は人間が可愛いと思えないので可愛いとか言わないけど。

あとは何を買おうかなと色々見て回って、お菓子とかそんなものをかごに入れて会計に向かう。

平日だからそんなにお客がいなくてすんなり会計を済ませることができたけど…意外と須賀さんの正体ってばれないんだね。

レジの人が買ったものを袋に入れてくれたから袋詰めの作業はしなくて済んだのですぐにスーパーを出ることができた。

買ったものは後ろの席に積み込んで、私はまた須賀さんに助手席のドアを開けてもらって車に乗り込んだ。

どうしてこの人はこんなことをしてくれるのだろうかと思い聞いてみようかと須賀さんを見る。

運転する須賀さんの横顔は、やっぱりアイドルと言うだけあってカッコよく見えた。



「あの、どうしてわざわざ車のドア…」

「ん?なんでだろうね?なんとなく、してあげたいなって思って」



なんとなくでしてくれるって…どんだけ爽やかで優しいイケメンなんだろうか。

世の女性がキャーキャー黄色い声をあげるのがわかる気がする。



「私、そんな子供じゃないので…もうしなくていいですよ」



一々面倒ではないだろうか?車から降りて、助手席に回ってドアを開けるなんて…私だったら面倒だからしない。



「そうだね、冬祢ちゃんもう17歳だもんね」



今後はしないと須賀さんは言ってくれたけど、なんだか子供扱いされたような気がして少しムッとしたけど、それよりもくすぐったい感覚がしてちょっとした怒りはすぐに消えてしまった。


またしばらく車を走らせて、マンションの近くまで来ればふと、今日発売の少年漫画の雑誌を買っていないことに気づいた。



「須賀さん、コンビニに寄ってくれませんか」

「え?いいけど…」



毎週買っている少年漫画雑誌のことを忘れていたなんて…アイドルがうちに来たという衝撃的なことがあったせいだろうなと納得して、コンビニにつけばすぐに戻るからと須賀さんに言って車を降りた。

コンビニに入り雑誌が置いてあるところに行って目的の物を手に取るとすぐレジに向かう。

漫画しか買っていないから袋はいらないと言ってすぐに車に戻る。



「なに買ったの?」

「…漫画雑誌です」



大好きな漫画がこの雑誌で連載されているから毎週欠かさず買っている。もちろん単行本だって買っている。

すごく面白いけど、アイドルは漫画とかアニメとか興味あるのかなと思った。