マンションの地下にはマンションの住人用の駐車場がある。

須賀さんはお母さんからここに停めてもいいと言われて、私たちは地下の駐車場にいる。

コツンコツン…と須賀さんの靴の音が地下に響き、そのあとを私はついていく。

それにしてもいいのだろうか…アイドルと買い物なんて…騒がれたりしないだろうか…心配でお腹痛くなってきた気がする…。



「冬祢ちゃん」



呼ばれて顔を上げれば黒のカッコいい車がそこにあった。

CMで見かけるやつだと少し感心してしまいながら、須賀さんが助手席のドアを開けてくれて待っていた。


隣に乗れと?イケメンの隣に乗れと言うのですか?心臓が爆発したらどうするんですか!


けど、嫌とは言えない性格ゆえ、渋々と言ったように私は助手席に乗り込んだ。

私が乗り込んだのを見て須賀さんはドアを閉めてくれて、運転席へと回り乗り込んでくる。



「シートベルトしてね?」

「あ、はい」



ガチャリとシートベルトをして、須賀さんはシートベルトをしたのを確認すれば車のエンジンをかけてゆっくりと走り出した。

地下の駐車場を出て、外の太陽の眩しさに目を細める。

別に吸血鬼でもないのに、太陽の光を浴びていると溶けそうだと時々思う。



「今日の夕飯、何にしようか」



一般道に出てスーパーへと向かっている途中、須賀さんはそう問いかけてきて、そういえば泊まり込みだったと改めて思う。

私一人だったら適当にラーメンかうどん作って食べるけど…さすがにアイドルがいるとなるとそんな適当なものは作ってあげられない。



「…須賀さんは、何がいいですか?」

「オレ?うーん…カレーかな?」



カレーならまぁ作れるからいいけど、意外と子供っぽいんだな思った。


しばらく車を走らせてスーパーにたどり着いた。

降りるときも須賀さんがわざわざ助手席のドアを開けてくれて、なんだこのお姫様と言うかお嬢様になった感じは…と、思った。



「あの、ありがとうございます…」



一応お礼は言っておこうと思って言ったら、にこりと笑みを浮かべて「どういたしまして」と爽やかに返された。

アイドルスマイルって太陽並みに眩しいと思った。

スーパーに入りカートにかごを乗せて、まずはカレーに必要な野菜を探す。

じゃがいもとニンジンと玉ねぎと…、カレーに必要な野菜を次々にかごに入れる。

須賀さんはすぐ隣で私が食材を選んでいくのを見ているだけだったけど、しばらく買い物に行かなくてもいいようにと別の物もかごに入れていく。

豆腐とかネギとかトマトとか。



「冬祢ちゃん、ぶどう食べる?」

「食べますけど…」



ふと、須賀さんがそんなことを聞いてきて、私は首をかしげながら食べると答えた。