「…誰?」



須賀さんの後ろから出されてどうすればいいのかわからなくて俯いていたら、石動さんの声が楽屋に大きく反響したように思えた。

誰?そう聞いた石動さんの質問に私は答える勇気がなくてただ顔を俯かせて4人の視線に耐えるしかできなかった。

そんなとき、そっと肩に何か乗った。

チラリと視線をずらせば男性の手があって、その手の持ち主は誰かと見れば隣に立つ須賀さんだった。



「社長の娘さんで、今お世話してるんだ」



それを聞いた4人は「えぇ!?」と息ピッタリに声を揃えて驚いていた。

その驚きに私はビクッとなって慌てて須賀さんの後ろへと隠れた。



「あんまり驚かせないであげてよ、冬祢ちゃん繊細なんだから」



後ろに隠れた私を気遣う須賀さんに感謝しつつそっと改めて4人を見てみた。

世の女性がキャーキャー言うのもわかる気がする…それほど彼らはかっこよくて、注目されている。

普通なら私みたいな人間が会っていい人たちじゃないんだ。それなのにうちの母は、なんてことをアイドルに頼んでいるんだ。



「ってことは、あの社長の話嘘じゃなかったの?!」



井ノ瀬さんがひょえー!とか言って大袈裟に驚いているがあれがありのままの彼なのだろう。ひょえーとか言う人初めて見たわ。



「へぇ…この子が社長の…案外チビだな」



興味津々に近づいてくる樹神さんは須賀さんの影から顔を覗かせる私を覗き見るように顔を近づけてきてはポンポンと頭を軽く叩いて自分でも気にしている身長のことを言ってきた。



「純くん、失礼なこと言っちゃダメだよ」



樹神さんの言動に注意するのはリーダーの石動さんで、彼も私に興味本意で近づいてきて目線を合わせるように腰を屈めれば「純くんがごめんね」と頭を撫でられた。

私、子供扱いされてる?

いや、確かに子供だけれどもそんな小さな子にするように接しなくてもよくないか?



「ほんとちっちゃいけど…かわいいなー」



最後にヘアメイクを終えた七原さんが近づいてきて、石動さんがしたように頭を撫でてきた。

だから私そんな子供じゃないんですけど…。

というか…なんかいつの間にかイケメンに囲まれてるんですけど!

逃げたい逃げたい逃げたい逃げたいっ

須賀さんだけでもイケメンだからこんなイケメンが360度囲んでいたら…ムリ。



「春陽さんこんな可愛い子供いたんだな~」



樹神さんの声が聞こえたと思ったら、私の頬をぷにぷにとつついてきた。