キミの笑顔の理由になりたい

 
車も駐車場に停めて受付のお姉さんに許可証見せて名前を書かされた。

あまり書きたくないけど芸能人でもなんでもないからしょうがないと腹をくくって名前を書くと、二度見ぐらいされた。

そら驚くわ。

芸能事務所社長と同じ名字だし。

でも名字が一緒の人ぐらいどこにでもいそうだからそんな驚くことないと思う。

いや、うちの名字ちょっと珍しいからなぁ…



「受付の人、驚いてたね」

「…そーですね」



お昼の人気番組風に返事を返しながら須賀さんについて行く。

まずは楽屋に行って少し打合せするらしい。

車に引きこもっていようと思ったけど、須賀さんが満面の笑みで一緒に行こうと言うから断れなかった。

ほんと、私っていやとか言えないチキンだな。



「あ、ここだ」



楽屋に到着したようでドアの横に張られているネームプレートを見て昨日のように目眩を起こした。

あぁついに来てしまった。

ルーメンの楽屋に…。

この扉の向こうに須賀さん以外のルーメンのメンバーがいるんだ、と思うとますます緊張して息が苦しくなりそうだった。

おちけつ…じゃなくて、落ち着け。

平常心平常心…と自分に言い聞かせるけど、心臓はいつまでもバクバクと早鐘を打っている。

そう言えば脈が早くなると早死にするとか誰かが言っていなかったかなとどうでもいいようなことを考えていると、須賀さんがドアをノックして開けた。



「失礼しまーす」



礼儀正しいけどどこか砕けたような感じでそう言う須賀さんは、すでに集まっているメンバーたちを見て「おはよう」と挨拶をしていた。



「おはー、ナナくんが最後とか珍しいね」



最初に反応したのは七原大和(ななはら やまと)。

ルーメンの中では一番年下で最近はドラマでも活躍している。

趣味は読書と絵に描いたような好青年。



「おはよー、漆斗くん」



のんびりした感じで挨拶してきたのはこのルーメンのメンバーのリーダー、石動智輝。

のんびり屋さんだけど歌がめっちゃうまいらしい。



「おっはよう!」



次に元気いっぱいに挨拶してきたのはこのルーメンのムードメーカー、悪く言えばおバカ担当の井ノ瀬雅実(いのせ まさみ)。

おバカだけど料理が得意らしい。



「はよー、漆(なな)」



最後は一番人気が高い樹神純一。

歌もダンスも完璧で、結婚したい芸能人ランキングで大体1位を取るイケメンだ。

今人気のイケメンが揃って、なんか…太陽並みに眩しすぎて目が開けられません。



「おはよう、漆斗くん」



須賀さんの影に隠れながらルーメンのみんなを見ていたけどその中に美千子さんがいて、七原さんのメイクをしていた。

一応知っている女性がいて私は少し安心した。



「おはよう、美千子さん」

「あの子は来なかったのね」

「あの子って?」



美千子さんに挨拶を返す須賀さん。

そうやって爽やかに挨拶できる彼が羨ましいと思っていたら美千子さんは少し寂しそうな声音で呟いた。

それを聞いた七原さんがあの子とは誰かと聞いた。

もしかしなくても、私のことだろうか……。



「ジャージ、ちゃんと返したかったんだけど…」

「それなら大丈夫ですよ。ほら、出てきなよ」



美千子さんが本当に悲しそうにしているのが須賀さんの影から見ていてもわかったけど、こんなイケメンたちの前に出る勇気がない。

どうしようかと思っていたら、須賀さんが後ろに隠れていた私をそっと出させた。