夕飯は須賀さんが野菜炒めを作ってあげると言ったので野菜炒めになった。

家事があまり得意ではないと言っていたけど普通に料理できているからなんの問題もない気がする。

何となく須賀さんの料理しているところを見ていたけど手際もまぁまぁいいし後は一人で大丈夫だろうと、私はお風呂に入っておくことにした。

慣れないメイクに慣れない服着て外出したんだからものすごく疲れているけど、フィギアのお陰であまり疲れを感じていない。

のんびりゆったりお風呂に入り、料理もできているだろう頃にお風呂から上がれば予想通り料理はできていた。

すごく美味しそうに見える。



「うまくできてるといいんだけど」



須賀さんはやはり少し自信無さそうだ。

こんなに美味しそうなんだから、それこそ須賀さんが自信持てばいいのに…。

パクリ、と一口野菜炒めを食べてみた。



「ど、どうかな?」

「…普通に美味しいですよ」



不安そうにしている須賀さんに素っ気なく「フツー」とは答えないようにしようと思ったら、思っていたことが口から出てしまった。

あ、っと思ったときにはもう遅くて、須賀さんは美味しいと聞いてすごく嬉しそうに笑みを浮かべていた。



「そっか、よかった」



本当に嬉しいのか満面の笑みだけでも眩しいのに、花が咲いているようにも見えた。

アイドルってスゲーって場違いなことを考えてしまった。


夕食も終わり、お皿を洗いながらテレビを見る。

須賀さんはお風呂に行っている。

テレビにはルーメンのメンバーの二人が映ってゲストとどこかロケに行っている、そんな番組が流れていた。

先週は須賀さんとルーメンのリーダーである石動さんがゲストと街をブラブラしていた。

今日は別のメンバーが川原でBBQをしていた。

ゲストが一回やってみたかったんだと楽しそうに笑っている。

芸能界ってどんな世界なんだろうかと時々考えてみるけど、怖いからあまり考えないようにしようと結局考えるのはやめてしまう。



「バーベキューかぁ…」



そりゃあ私にもそういったことしたいって気持ちあるけど、友達いないし…。

夏休みにはプール行ったり、海行ったりして楽しく過ごすものなんだろうけど生憎と私はそういったものを一緒に楽しんでくれる人がいない。

小学生の時は友達いたけど…中学上がってからその友達とは疎遠になってしまったし…。

というか、よくいるじゃん?

クラスにリーダー的な女子グループ。そういった人たちと仲良くして私はそんな輪に入れるわけないから一人でいたんだけど…。

昔の思い出がふとよみがえるけどすぐに忘れるように首を横に振る。

思い出したくない、中学生の時なんか。



「冬祢ちゃん、手伝うよ」



いつの間にか須賀さんがお風呂から上がっていたようで、声をかけられるまで彼がすぐ近くにいたことに気づかなかった。