観葉植物の影に隠れてドアの方を見れば、美千子さんが意気揚々というのだろうか…そんな感じでドアを開けた。
「あら?」
私がいないことに気づいた美千子さん。
その後ろから須賀さんがどうしたのかと部屋の中を覗いてくる。
隠れながらその様子をずっと見ていた。
けど、観葉植物の影に隠れていても限られた空間の中ではすぐに見つけられる。
「そんなところにいたの?ほら、冬祢ちゃん、出てらっしゃい」
見つかってしまうのは時間の問題だと頭ではわかっていてもついつい隠れてしまう私ってよほど臆病なんだなと改めて思った。
そろそろと観葉植物の影から出てくるとまっすぐ須賀さんを見られないので私は顔を俯かせていた。
「どう?漆斗くん」
「……え、あ…すごく可愛いです」
ちょっと間があったけど可愛いなんて言われ慣れていない単語に私はもう恥ずかしすぎて顔から湯気が出そうだった。
「あら、漆斗くん見惚れてたの?」
「え!?あ…その……あ、ありがとうございます美千子さん!」
まるで美千子さんから逃げるように私は須賀さんに引っ張られて部屋をあとにした。
早足でエレベーターに向かう須賀さんの背中を不思議そうに見る私は声をかけるべきなのかと迷った。
「あ、あの…」
勇気を出して声をかけてみるけど、須賀さんには届いていないのか歩みを止めてくれる気配はない。
「あの!」
「!…あ、ごめん…痛かったよね?」
「いえ…」
別に手を引っ張られるのが痛くて声をかけたわけじゃないんだけど…歩みを止めてくれたからいいかと珍しく前向きに考えてみる。
「その、すごく似合ってるよ」
「…へ?」
「その服、すごく似合ってる」
立ち止まってくれた須賀さんは突然似合っていると言ってくるから一瞬なんのことかわからなかったけど、服のことを言っているのだとわかり私は顔を赤らめた。
こんな女の子らしい格好ほとんどしたことがないから似合うとか言われると照れ臭く感じた。
「あ、ありがとう…ございます…」
誉められているんだと思って一応お礼を言ってみる。
「それじゃあ…行こうか」
なんだかくすぐったい感覚がして、どうすればいいのかと考えていると須賀さんが今度は優しく手を引っ張りながら歩き出した。
そういえば何で手を握られたままなのだろうか?
ちょっと疑問に思ったけど、手を振り払う理由もないから私はそのままにしておくことにした。