キミの笑顔の理由になりたい

 
いやだ、昔のことは忘れようって決めたのに…。

私が落ち込んだように顔を俯かせていると須賀さんがどうしたのかと顔を覗きこんできた。

いきなりイケメンフェイスが目の前に現れて驚いたけど飛び上がったりはしない。



「…なんでも、ないです」



会って1日しか経っていない人に話すことじゃないし私はそう言って誤魔化した。

須賀さんは納得していないようだけどこれ以上聞いてほしくなくて須賀さんから顔を背けた。



「さて、漆斗くん。レディが変身するから外で待ってなさい」

「はい。冬祢ちゃん、またあとでね?美千子さんはいい人だから大丈夫だよ」



いい人…か。

人の評判はあまりあてにしないからそう言われても信じようと思わなかった。



「さて、冬祢ちゃん…私が可愛くしてあげるわね」



そう言って散髪用のハサミや櫛を持ってにこりと笑みを浮かべている美千子さんが少し怖いと思った。

椅子に座らされ髪を切るからカッパみたいなのをつけられて、眼鏡は髪を切るとき邪魔だと取られてしまった。

眼鏡がないと全部ぼやけて見えるからどこを見ていればいいのだろうかと思い、目の前に並ぶメイク道具に気づいてそれをただじっと見ていることにした。

チョキチョキと切られているけど髪の長さはあまり変わっていないようで、顔を隠すぐらい長かった前髪はバッサリ切られた。



「すっごくいい黒髪なのに…ちゃんとお手入れしないと勿体ないわ」

「は、はぁ…」



オシャレに興味ない私が、髪のお手入れなんて知っていると思っているのだろうか?

そもそもシャンプーとか激安のモノだし、CMでやっているようなシャンプーしてもあんまり変わらない気がするし。



「お肌も、折角白くてキレイなんだから化粧水とか乳液とかしないとダメよ?」



そんなものにお金使うぐらいなら漫画買いますけど?



「…もしかして、そういうのに興味ない?」

「え?あ…まぁ…高校生だし…化粧したって後々肌荒れるって聞きましたし…」



化粧を若いうちからしていると肌が荒れるなんて話をどこかで聞いたことあるような気がする。

まぁ別に荒れてもどうでもいいんだけど。



「そうね、若い子はまだお肌がピチピチなんだから無理にお化粧しなくていいかもね。
でも、カッコいい人とお出掛けするんだったら少しは可愛くなってもいいんじゃない?」



フィギアにつられて外に出ただけなんですけど。

美千子さんは色々話しかけてくれた。

髪の手入れの仕方とか、化粧水や乳液の使い方とか、最近の女の子の流行りとか。

私には縁のないものだと思っていたけど聞いていると少し楽しかった。