部屋の中を覗く須賀さん。
中に二人がいるかどうかの確認だろうか。
てか、私をそんなイケメンに紹介しようとしないでくれ。
今すぐにでも逃げ出したいけど足がすくんでいるのかそこから一歩も動けない。
「あ、美千子さん!二人はいないの?」
「さっき収録に行ったわ」
部屋の中に誰かいたみたいで、その人にルーメンの二人がいるかどうか聞いていた。
二人がいないとわかり私は強張らせていた肩の力を抜いた。
「じゃあ今のうちだ。美千子さん、さっき言ってた子つれてきた」
須賀さんはそう言うと私を部屋の中に引き込んだ。
そして、美千子さんという方の前に出された。
「その子が時宮社長の娘さん?」
「冬祢ちゃんっていうんです」
あの、なに勝手に私の名前教えてんですか?
勝手に紹介されてどうしようどうしようと頭の中がパニック状態になりそうだ。
美千子さんという方と顔をまともに合わせられない私は俯いたままで、その人が目の前まで来たのはその人の足が見えたから。
「初めまして、北河美千子っていいます」
とても優しそうな声だけど…他人が苦手な私は中々顔を上げることができない。
自分も何か言わなければと焦ると何を言っていいのかますますわからなくなって私の頭の中はぐちゃぐちゃになっていく。
「美千子さん、冬祢ちゃんちょっと人見知り激しくて」
「そんな謝ることじゃないわ。でも、お顔は見せてくれない?これからキミを可愛くするんだから」
「………………は?」
顔をあげて挨拶もできないなんて自分はなんてチキン野郎なんだろう…と落ち込んでいると、美千子さんが 可愛くするとか言うから思わず顔をあげてしまった。
「あら、あらあらあら!可愛いじゃない!ちょっと髪がボサボサで服がジャージっていうのが勿体ないけど…なにこの子、私好みだわぁ!
自然な黒髪…毛先整えればもっとよくなるわね。それにこの日焼けしてない白い肌!若いっていいわねぇ」
私が顔をあげたことによって美千子さんとやらはものすごく興奮してしまったようだ。
手入れなんてあまりしたことない髪に触れられて誉められて、引き込もって外にでない不健康そうな肌を白くていいと言う。
そんな風に言ってくれたのはこの人が初めてだった。
『気味悪い』
ふと、昔言われたことを思い出してしまって私はまた顔を俯かせる。