「じゃあさ、何か好きなもの1つ買ってあげるよ」
外に出るのを嫌がっている私に気づいたのか、須賀さんはそう提案してきた。
私はその提案にピクッと反応を示した。
この間私の好きな漫画の主人公のフィギアが発売されたけどお金が足りなくて買うのを諦めていた。
でも、それを買いに行くとなるとアニメショップに行かなければならない。
アイドルを連れていって大丈夫だろうか?
いやでもあのフィギアめっちゃカッコいいから欲しいし…
「冬祢ちゃん、どうする?」
「…行きます」
私の外に出たくないという思いより、大好きなキャラのフィギアが欲しいという欲望が勝った。
というわけで、早速出掛けるために着替えるのですが…私はジャージのままでいいと言われた。
何故?
「冬祢ちゃんって可愛いからちょっとオシャレにすればいい線いくと思うんだよねー」
つまりは今時の女の子のような服を着せてオシャレにしようって魂胆ですか?
え、それって須賀さんがすんの?
「知り合いのメイクさんに頼んどいたから」
そう言いながらグッと親指を立てる須賀さんになんて用意がいいんだと感心通り越して放心した。
ジャージのまま須賀さんの車に乗り込み、その知り合いのメイクさんがいるテレビスタジオに向かった。
ん?テレビスタジオ?
それはつまり…須賀さんみたいな有名な方々がいるかもしれない場所?
「…帰りたい」
すでに動き出している須賀さんの車の中で私はポツリと呟いた。
しばらく車を走らせると目的の場所に着いたようで、警備員さんに一言言うと須賀さんの車はその建物の駐車場に入っていく。
あぁ、なんか緊張で吐きそう…
欲望のままに外に出なければよかったと今さら後悔してしまう。
適当な場所に車が停められて、このまま車に引きこもっていたかったけど、須賀さんが行こうと手を引っ張ってくるからそれを拒めない私は須賀さんの影に隠れながら彼について行った。
駐車場からエレベーターに乗って須賀さんがどこの階のボタンを押したか見えなかったけどエレベーターはどんどん上に上がっていき、チンと音を立てて止まった。
「こっち」
須賀さんに引っ張られて歩くことしかできない私は周りを見る余裕がない。
幸い、通行人は私たち二人だけのようだ。
「ついた、ちょっと待ってね」
目的の場所に着いたのかと、ようやく顔をあげることができた私はドアの横に貼られているネームプレートを見て目眩がした。
そこにあったのは、ルーメンのメンバー…
石動 智輝(いするぎ ともき)
樹神 純一(こだま じゅんいち)
その二人の名前だった。
