キミの笑顔の理由になりたい

 
私は根暗の引きこもりオタクで、須賀さんみたいに人前に立つこともできない。

けど須賀さんは私ができないことをやってのける。

羨ましい…と聞かれても私にはわからない。



「ごはん、炊けたみたい」

「…これに食べる分入れてください」



ニコニコと笑っている須賀さん。

私みたいな人間にそんな優しくして彼には何か得することでもあるのだろうか。

いや、そんなこと考えること事態間違っている気がする。

嫌なことばかり考える自分にため息をこぼしながらカレー用のお皿に自分が食べる分だけのお米を盛りカレーをかける。

カレーに何かトッピングする人がいるようだけど私は特にこれと言ったトッピングはしない。

あるとすれば温泉卵だろうか。

須賀さんもトッピングすることはないようでそのままのカレーを食べてくれた。



「うん、美味しい!」



そういえば、お母さん以外の人に料理を食べてもらったことがないなと気づいた。

家庭科の調理実習はみんなで作ってみんなで食べていたからこうして誰かに作ってあげたことはない。

お母さんが忙しい人だから自然と料理を作るのを覚えて、お母さんに食べてもらっていたけど、一緒にご飯を食べたのは数える程度しかなかった。



「冬祢ちゃんってやっぱり料理じょう…どうしたの?」

「へ?」

「俺なんか嫌なこと言った?」



頬を冷たい何かが滑るのを感じて、自分が泣いているんだと気づいた。

なんで、どうして?

次々に溢れる涙は止まらなくて、拭っても拭ってもただ服の袖を濡らすばかり。



「…冬祢ちゃん、泣きたいときは泣いた方がいいよ」



泣きたい?この私が?なんで、泣きたいと思った?

よくわからない…どうして泣いているのかわからないのに…。

そんな私を須賀さんは朝の時のように抱き締めてくれた。



「社長…春陽さんが言ってたんだけど…
”娘にはいつも寂しい思いをさせて申し訳ないって思ってる。娘が作った料理を直接美味しいって言えないからきっとすごくすごくあの子は寂しがっている”って」



あぁ、なるほど。

私は今までお母さんにも料理が美味しいと直接言われたことなかったから、須賀さんが言ってくれたことが嬉しかったのだろうか。

なんだ…単純なことだったんだ。



「あ、あの…ありがと…ございます」



誰かに料理を食べてもらって美味しいと言われることがこんなにも嬉しいことなんて、私は今まで知らなかった。

美味しいと言ってくれてありがとうと思ったことを口にして、須賀さんを見上げた。



「へっ?!あ、あ……こ、こっちこそ…美味しいカレーをありがと…っ」



何故か須賀さんは少し慌てていた。