キミの笑顔の理由になりたい

 
「須賀さんは、甘口中辛辛口どれがいいですか」



一日がかりの片付けも終わり夕飯の支度をしようとキッチンに立ったのはいいけど、カレーのルーはどれを入れようかと悩んだ。

私はあまり辛いのが好きではないけど、一応辛口のルーもあるので須賀さんの好みを聞いてみた。



「中辛かな」



よかった…。

須賀さんの返答を聞いてそう安心した。

聞いといてなんだけど、私は本当に辛いのが苦手…というより辛い食べ物が嫌いだ。

舌がヒリヒリするし、体が熱くなって鼻水出そうになるし。

中辛はほどよく辛さがあるだけで嫌いではない。

逆に甘口は甘くて食えたものじゃない。

でも甘口のルーもあるのは貰い物だから。

商店街の福引きか何かで貰ったような気がする。

そのうち賞味期限切れて食えなくなるんだろうな…と戸棚の中を見て思う。

もったいないけど捨てようかなと甘口のルーを見て小さく息を吐く。



「それ、いらないの?」

「へ?あ…甘口は食べないので…」



未開封の甘口のカレールーを見ていた私は後ろに立つ須賀さんに気づかなくて少し驚いた。



「マネージャーにあげてもいい?うちのマネージャー甘口のカレーしか食えないらしくて」

「…そう、なんですか…どうぞ」



誰かが欲しがるなら捨てる必要はなくなったわけだ。

甘口のカレールーは須賀さんに渡して、私は中辛のルーを取り出してカレー作りをはじめた。

しばらくすればカレーの食欲をそそる匂いがキッチンに広がる。

ぐぅ、と小さくお腹が鳴った。

自分では気づいていなかったのか、どうやら私は空腹らしい。

まぁ朝の食パン一枚しか今日は何も口にしてないから当然と言えば当然だろう。



「冬祢ちゃんって料理上手だね」

「…これぐらい普通では?」



ご飯が炊けるまでまだ少し時間がある。

その間に使ったまな板や包丁を洗っていると、ずっとカレーを作る様子を見ていた須賀さんが料理が上手だと言ってきた。

一般的な女性はこんなことできて当然…とはいかない人も多々いるだろうけど、カレーなんてルーの入った箱の裏を見れば大抵作り方が書かれてある。



「冬祢ちゃんぐらいの女の子って料理そんなしない気がしたんだけど…今時の子って料理するの?」

「…さぁ……私、普通とは違うので」



普通の定時制の学校に通う女の子は料理をするのかしないのか私にはわからない。

する子もいるだろうけど、高校生って遊んだり勉強したり部活したり…青春を満喫しているから料理なんてしないんじゃないのだろうか。

私は青春なんて満喫してないけど。



「でも、冬祢ちゃんが料理上手でよかった。
俺、料理そんな得意じゃないっていうか家事がそもそもそんな得意じゃなくて…」



アイドルは忙しいからそうなるのも当然だと思う。

それに、須賀さんが家事できなくても、世の女性は「大丈夫!私が全部やってあげる!」とか言いそうだ。

アイドルって、ほんと、私とは真逆の存在だ。