それからしばらくしたある日。

「行くぞ、飛鳥。」
「はいっ!」

いよいよ、今までの努力が試される時が来た。

いつもとは逆向きの電車に乗り、向かった先は試験会場。

そう。今日は大学受験の日。

「緊張します…。」
「大丈夫だって。今まで頑張ってきただろ?」

きっと、飛鳥は僕も緊張しているのを知っていて言っているのだろう。僕だって、飛鳥が緊張しているのは、飛鳥が口で言う前から知っている。

試験会場は、ものものしい雰囲気に包まれていた。

最後のあがきと言わんばかりに参考書その他を広げ、他のものが目に入らないかのようにとんでもない速さでペンを走らせている。この速さ、飛鳥を超えるか。

僕達は、偶然にも隣の席になった。

試験会場でこういうのはあんまりよくないとは分かっているのだが、自然と笑みがこぼれてしまう。

「…太陽さん、頑張って下さいね。」
「うん。飛鳥もな。それで…。」

二人で、一緒の大学に行こう。

口に出すのは恥ずかしかったので、僕はルーズリーフに書いて飛鳥に見せた。

「私も同じことを考えてました。」

飛鳥の返信は、同じくルーズリーフを媒体にしていた。