僕を支えてくれるのは…飛鳥だ。

いや、飛鳥であってほしい、と言うべきか。

僕の中の雲のような思いは、だんだんとはっきりとしたものになっていた。

「安堂。」

高端の一言で、僕は我に返った。

「ここ、教えてくれる?」
「あ、おう…。」

まだ頭の中の世界に浸っていたかったが、今はそんなことをしている場合ではない。

「ん~、ここはこの構文が使われてるから、ここが関係代名詞だって分かって…。」

教えながら、僕は気づいた。

高端の視線は、問題文ではなく、僕に注がれていた。

「ちゃんと聞いてんのか、高端?」
「き、聞いてるって!」

僕は普通に聞いたのだが、何故か高端は焦ったような、怒ったような口調になっていた。

「…で、ここは…。」

だが僕が説明を始めると、やっぱり高端の視線は僕に注がれる。

「…だから、何で僕を見てんの?」
「ゴ、ゴメン…。」

バイトをしている高端も、僕が今まで見てきた高端とは違っていた。

…もうすぐバラバラになるのが、寂しかったりするのか?…だとしたら、意外とカワイイんじゃん、高端のやつ。