「美味し~い!」

一口食べたその瞬間に、飛鳥の口から発せられたこんな言葉。

「飛鳥って、本当に大好きなんだな、寿司。」
「はいっ!だって美味しいじゃないですか。」
「だよな。」

…そんな感じで会話を繰り広げる僕達とは対照的に、丹隼さんはさっきからものすごい勢いで食べ進めている。

数えてはいないが、もう皿の枚数が二桁に突入したかと思われる。レーンに注がれる視線は、獲物を狙う野獣のものだった。

「丹隼さん、すごい勢いですね…。」

話しかける言葉が見つからず、むしろありのまま言ってみた。

「だって回転してるんだよ?誰がどれを取るか分かんないじゃん。安堂君も覚えておくといいよ。ここは戦場なんだ。」

僕は思った。この人、酔ってるのか?

その間にも、また一皿、俊敏な動きでレーンから取って行く。

いつの間にか忘れていた、何気ない時間。

本来、僕達はこんな風にどこかへ出かけ、笑っていられるはずの人間なんだ。

こんな時間が続けばいいのに、と思ったのはこれが初めてじゃない。

でも、いつか終わるんだ。

だったら、一秒一秒、大切にしないと。