いよいよ、犯人捜しが始まった。

「あの…どうやって捜すんですか?」

飛鳥が、まだ少し腫れた目を丹隼さんに向けた。

「そうだな…まずはトリックを考えないと、かな。」
「トリック?」
「そう。あの短時間で、しかも心臓付近だけを正確に凍らせるトリックをね。…安堂君って、確かミステリー小説とか結構書いてたよね?その中に参考になるものがあるかもしれないから…捜してくれない?」
「あ、はい。」

僕は家に帰ると、ありとあらゆる場所から僕の書いたミステリー小説を引っ張り出してきた。そしてそれをカバンに詰め込み、もう一度丹隼さんの家に足を運んだ。

「ふぅ…。」

重い。余計なものは一切持ってきていないはずなのに、かなり重い。一体、いつこれだけの量を書いたのか。自分でも不思議なくらいの量の小説を、僕は書いてきていた。

「お疲れ様、安堂君。じゃあ読もうか。」

僕と飛鳥、そして丹隼さんの三人は、僕のカバンの中から原稿用紙の束を一組取り出すと、書いてある文字列に目をやった。

中には、僕すらも内容を覚えていないものもあった。…参考になるかどうか、ということは別にして、純粋に小説として楽しめた。

そして、ひたすら懐かしい作品を読み続けること二時間。

「あっ…!」

飛鳥が小さく声を上げる。

「この方法…使ったんじゃないですか?」