「飛鳥も、覚悟あるよね？」

僕は飛鳥の方に顔を向けた。…だが、何故か飛鳥は下を向いていた。体は小刻みに震えていた。

「どうした、飛鳥？」

飛鳥の肩をポンと叩くと、飛鳥がかすかに振り向いた。

その瞬間、僕の目の色が変わった。

飛鳥は…泣いていた。

頬を涙で濡らしながら、まるで何かにおびえる子供のように、泣いていたのだった。

「飛鳥…？」

僕は尋ねたが、聞こえているのか聞こえていないのか、分からなかった。

「…怖い…怖いよ…。」
「えっ…？」
「…嫌だ…怖い…！」
「何があったんだ、飛鳥！」

僕は飛鳥の前に座り、飛鳥の肩を揺さぶった。

こんな飛鳥、初めて見た。

いつも優しく笑顔を振りまいている飛鳥にも、こうなる時があったとは。

飛鳥は…無理をしていたのか…？

「怖いのっ…！」

下を向くと、飛鳥のキレイな前髪が顔を隠した。だが、こぼれ落ちて床を濡らしていく大粒の涙までは、隠せていなかった。