その夜、僕は寝られなかった。

理由は特にないのだが、何故か眠気が消えていた。

飛鳥は熟睡している。

…暇だ。

時計が指すのは午前五時。気がつけば、僕はもうすぐ徹夜しようとしている。

「…初日の出、見てみるか。」

よく考えれば、僕は生まれてこの方初日の出を拝んだことがない。僕は飛鳥を起こさないように、ゆっくりとベランダへと歩いた。

「寒っ…。」

窓を開けると、厳しい寒波が一気に部屋へとなだれ込む。だが服を取りに行くのが面倒だった僕は、そのまま寒波を体に浴びた。

ベランダで地平線を見ること一時間半。

「はい。」

僕の体に、何か布のようなものが触れた。驚いて振り返ると、そこにはまだ少し寝ぼけ眼の飛鳥がいた。

「あ、飛鳥…。おはよう。」
「おはようございます、太陽さん。」

飛鳥はいつもと変わらない様子で、にっこりとほほ笑んだ。