その瞬間、飛鳥がクスリと笑った。

「どんな感じかって聞いてるのに、普通って…。」
「そ、それ笑う所か?」
「…私、今年は去年より笑うことにしたんです。」
「去年より笑う?」
「はい。私、去年はあんまり笑ってませんでしたから…。」
「そうかな?」
「気にしなくていいですよ。去年は去年、今年は今年です。」
「…そうかもな。」

ふと隣を見る。そこには当然飛鳥がいるのだが、僕はあるものを感じてしまった。

僕は…飛鳥の事が好き、なのか…?

いや、たまたまだろう。街灯の当たり方で、飛鳥がいつもより美人に見えただけだ。

…だとしても、僕はそう思ったんだろう…?

頭の中で、二人の僕が争っている。かなりの善戦だ。

「…こういうことって、僕にもあるんだな…。」

飛鳥に聞こえないように、囁くように呟いた。息は白く夜空に溶けて、しばらくすると見えなくなった。そして相変わらず、月と街灯が僕達の明かりだった。