カノジョノカケラ

「どこ行く?」
「どこでもいいですよ?」

思えば、一切デートプランを立てていない。完全に行き当たりばったりなデートだ。

「じゃあ…水族館でも行く?あそこだったら寒くないし。」
「あ、いいですね。行きましょう、太陽さん。」

電車に揺られ十五分。

「何これ、デカっ!」

思わず声が出てしまうほどに巨大なサメが、水槽の中を悠々と泳いでいた。まるで水槽の主とでも言いそうな、周りを一切気にしない泳ぎ方だった。

「大きい…。」

飛鳥も大きさに圧倒されているようだった。サメを見上げ、目を輝かせている。少し子供のような感じがした。

そういえば、葉月もこんな感じだったな…。

ついうっかり、葉月のことを思い出してしまう。

…葉月には悪いけど、僕は葉月のことを忘れて生きて行くつもりだ。

理由はデートをしている理由と一緒だ。いつまでも昔のことを引きずるのは、できるだけやめにしたのだ。

「次行きますよ、太陽さん。」

飛鳥が僕の手を引く。僕はサメを見送ると、次の水槽へと向かった。