「…。」

僕は正直、迷っていた。

まだ頭の中から、完全に呪いのことが消えたわけじゃない。少しだけだが、残っていた。

そしてその少しだけのものは、僕に首を縦に振らせるだけの勇気を奪っていた。

また飛鳥が、前みたいになってしまうかもしれない。そう思うと、怖かった。

でも…そのせいにしていつまでも抱え込んでいたら、いつまでたっても前に進めない。

変わらなければ。

「…じゃあ、明日は楽しむか。」
「はい!」

そうだ。それでいいんだ、太陽。

迎えた翌日。

雪が降っていた。少なくもなく多くもない、丁度いい雪だ。

「よし、これで…。」

忘れ物をしていないか、入念にチェックする。…よく考えれば、飛鳥もこの家にいるのだから忘れ物は特にしないはずなのだが。

「行くぞ、飛鳥。」

ドアを開け振り返る。飛鳥は、ブーツを履くのに手間取っていた。

「ちょっと待ってくださいよ~。」

…自宅からデートっていうのも、変な感じだ。