「君、これは…?」
「分かりません…。気づいたら、飛鳥がこうなってて…。」
「まだ息はあるな…とにかく、これから署に来てもらえるか?」
「はい…。」

僕は拒否権を持ち得なかった。そして、僕は真夜中の道を、パトカーに乗りながら走っていた。

「とりあえず、座ってくれ。」

署に着いた僕は、取調室のイスに座った。窓はあるものの部屋は薄暗く、僕の横の壁にはやたら大きな鏡があった。…これが取調室か…。

「さてと、夜も遅いし、早速本題に入ろう。」

僕は背筋が凍りそうに寒いのを感じた。

「近藤飛鳥さんに怪我を負わせたのは…君だね?」
「…え…?」
「返り血がつかないように努力はしたんだと思うが、君のその指、血がついてるよ?」
「その、これは…。」
「間違ってついたってわけじゃなさそうだな…。」
「いや、間違ってついただけなんですけど…。」
「じゃあ、別の証拠を出そう。ついさっき連絡があったのだが、彼女が怪我をしたのは今から約一時間前だ。その間君は何をしていたのだね?」

二宮さんの目には、僕は犯人としか映っていないようだった。僕は今、緊張と恐怖とが入り混じった、変な感情を味わっていた。