僕は再び学校に戻ることになった。

立ち入り禁止は解除されたものの、映画研究部の部室にはほとんど誰も入っていない。

「ゲソ痕があったのは、ここ。」

丹隼さんが指し示す場所は、窓からもドアからも離れており、確かに不可解だった。

「しかも、ここにあったのは一組だけ。つまり、このゲソ痕をつけた人は、ここから全く動いていないんだ。」
「靴がそこに置いてあっただけっていうのは考えられないんですか?」
「だとしたら、その人物は校内で靴を履いていない、あるいは二つ持っていたっていうことになるんだ。それはそれで不自然じゃない?このゲソ痕はこの高校の上履きと同じだから、靴を履いていなかったらすぐにバレるし、新しいのを買っていたりとかしたら、目撃情報が出るはず。」
「ここの上履きと同じだったら、関係者の靴を調べればいいんじゃないですか?」
「そう。だから調べてみたんだけど…。」

丹隼さんの表情が曇る。

「その場にいられないはずの、飛鳥ちゃんの靴と一致したんだ。」
「え…?」

嘘だ、と言ってほしかった。まだ飛鳥が犯人だと決まったわけじゃないけど、犯人の可能性に一歩近づいただけでも、嫌だった。

「あ…飛鳥、嘘…だよな?」

僕のすぐ隣に立っている飛鳥は…物憂げな、というより何かについて悩んでいるような表情で、何も言わず立っていた。

「…飛鳥…?」

そして、飛鳥は何も言わないまま、部屋から立ち去ってしまった。

「飛鳥!」

僕は追いかけようとしたが、丹隼さんに呼び止められた。

「…ショックなんだと思うよ、こんなのを言われて。」