まだ、やるべきことは他にも残っていた。

蒼衣ちゃんを殺した犯人を、まだ見つけていない。

僕はまた、飛鳥と一緒に丹隼さんの家を訪ねた。

「お邪魔しま~す…って…。」

丹隼さんの家は、前来た時よりも散らかっていた。足の踏み場がないほど本が散乱し、まるで強盗に入られた図書館のようだった。

「あ、安堂君達か。ゴメンね、散らかってて。」
「…大丈夫、です…。」

飛鳥と目が合う。引きつったような苦笑いが、双方の顔に出た。

「そういえば、警察から新しく情報が来たんだ。」
「どんな情報ですか?」
「うん。それが…ちょっと不可解なんだ。」
「不可解?」
「そう。情報は二つあるんだけど…。

まず一つ目は、現場のゲソ痕…って言って分かる?現場に残されていた足跡のことなんだけど、それがあり得ない残され方をしていたんだ。具体的に言うと、入口からかなり離れたところに、少しだけ違うゲソ痕が残されていたんだ。

二つ目は、凍死していたことについて。凍死していたっていうのは周知の事実だけど、鑑識が見ても、人間じゃできないくらいにピンポイントだったんだ。」

そう言うと、丹隼さんは何やらファイルのようなものを取り出してきた。

「これは…?」
「この事件について分かったことをまとめたファイル。ここにもうちょっと詳しい情報が載ってるんだけど…見る?」
「あ、はい。」

ファイルを広げたが、どうにも凡人には理解できそうもない内容だった。

「あの…もうちょっと詳しく説明して頂けませんか…?」
「そうだな…。」

丹隼さんは頭を掻いたが、やがて何かが閃いたかのように言った。

「じゃあ、現場検証してみる?」