「…。」

僕は二人がくれたチョコを見比べた。飛鳥のはハート形で、高端のは丸形だった。だがどちらも、僕には到底真似できないようなデコレーションを施されている。食べるのがもったいないほどだった。

「どうすりゃいいんだよ…。」

僕は頭を抱えた。何の解決策も思い浮かばない。ドア越しに聞こえるかすかな足音で、飛鳥が帰ってきているのは分かっていた。だから、ここから出られない。

「…誰か相談してくれる人いるかな…。」

ケータイに登録している人達の名前を順番に見てみる。でも、相談に乗ってくれそうな人は見当たらなかった。…そもそも、こういうことは自分で決めるべきことなんだ。人に相談しようとする時点で、間違っている。

「…。」

チョコはまだ、何も変わらずにそこにあった。

「…いただきます…。」

僕は飛鳥のチョコを食べた。口の中で、優しい甘さとほのかな苦みが絡み合う。今まで食べたどのチョコよりも美味しかった。

続いて、僕は高端のチョコも食べた。飛鳥の時と同じような、だが、少し違う味が舌を包み込む。

「…はぁ…。」

少しチョコの香りがするため息が、口の前ですぐに消えた。食べたところで、決着がつくわけがなかった。

「太陽さん。ご飯…出来ましたよ。」

飛鳥が僕を呼んだ。

「…そこに置いといて。」

何があっても、飛鳥と会いたくなかった…いや、会ってはならないと感じていた。僕はひきこもりのような応答をしたが、それも仕方ない、と自分に下手な嘘をついた。本当は、飛鳥と一緒にいたいはずなのに。