「これなら、文化祭に出せそうね。」

加賀が言った瞬間、端本が何かを思い出したように叫んだ。

「あ!そうだった…私、まだ全然書けてない…。」

それに呼応するように、御厨も。

「ちょっと、それ私もじゃないの!」

さらに高槻まで。

「…急がないと。」

僕も締め切りに間に合わせるため、続きを書くことにした。だがやはり、僕は忘れていた。この後のストーリーが、全然思い浮かばない。

「本格的にどうしよう…。」

そう悩む僕とは対照的に、飛鳥は相変わらずのスピードで書き続けている。まるで、今まで考えていたストーリーがペン先で爆発したかのようだった。

そして、二十分後。

「出来ました!」

いつの間にか積み上げられていた原稿用紙は、とても二十分で書いたとは思えない量だった。

「ちょっと、何ボーっとしてんの?」

飛鳥の才能に圧倒される僕に、少し怒ったように端本が言った。

「あ、悪い…。」
「全く…こんなんじゃ、葉月も泣いてるわよ?」
「はいはい…。」

そうだ、葉月が見ているかもしれない。

ある意味とんでもない妄想に駆られ、僕は再び原稿用紙とにらめっこした。