…と、そんな会話をしていたら、いつの間にやらバレンタインの前日となってしまった。

「え～、明日はバレンタインですが、くれぐれも学校にチョコは持ってこないように。」

ホームルームでの先生の話に、クラスメートは笑い声で応える。

…こんな風に先生が言ったとしても、皆は完全無視でチョコを持ってくる。しかも、そのチョコを先生にあげたりもしている。これはいわゆる「暗黙の了解」というやつだ。

帰り道。

「いよいよ明日か～…。」

飛鳥が伸びをする。

「何か張り切ってるな、飛鳥？」
「べ、別に張り切ってなんかないですよ？」
「張り切ってるって顔に書いてるぞ？」
「書いてませんよ、もう…。」

そんなことを言っていた飛鳥だが、寄り道をしてチョコを買っていたのは言うまでもないだろう。

「さてと…。」

家に着くなり、テキパキとチョコを作る準備をする飛鳥。

「あ、私がいいって言うまで入らないでくださいね。絶対ですよ？」
「了解。」

こういうのは、やっぱり見られたくないものなのか。

葉月がチョコを作る時は、僕がメールをしても電話をしても、一切応答がなかった。

皆、これにはとんでもない集中力を発揮するものなんだ。

「それにしても…。」

暇になってしまった。さて、何をしようか？