僕が飛鳥から離れたくない理由は…飛鳥そのものだ。

飛鳥の全てが、僕のそばにあって欲しい。一部分だけでも、離れてほしくない。

僕は…飛鳥が好きだ。

はっきりと言える。やっと、気持ちがちゃんとした輪郭を帯びたのだった。

「…あのさ。」
「何ですか?」
「ちょっと変なこと聞くけど…。」

言おうとするが、勇気が出ない。間が開く。なるほど、飛鳥との会話で感じていた間も、こんな感じで開いていたのか。

「飛鳥ってさ、今好きな人…いたりする?」

好き。この単語を口にしただけで、文脈とは関係なくちょっと焦ってしまう。

「…。」

間が開く。怖くはなかった。言おうとするが、勇気が出ないだけなんだろう。

「ゴメン、やっぱ今の忘れて。」

だが、飛鳥が少しだけ口を開くと同時に、僕の口から飛び出るのはこんな言葉だった。やっぱり聞きたくない、ということか…。

「そ、そういえば、もうすぐバレンタインだよな…。」

どうにか話題をそらそうとするが、どうしても恋愛が絡む話になってしまう。

「あ、本当ですね。チョコ用意しないと…。」
「お、飛鳥にもあげたいって思う人がいるんだ?」

…墓穴を掘ってしまった気がするのは僕だけだろうか…?

「で、でも義理ですよ。そんな、本命とかそういうのは…。」

墓穴を掘る夢を見ていただけらしい。ホッとした。