カノジョノカケラ

家に着く。

「ちょっと早めですけど、ご飯の支度しますね。」

飛鳥がキッチンに行き、冷蔵庫から食材やその他もろもろを取り出す。

「じゃあ、ちょっと宿題してくる。」
「はい。出来たら呼びますね。」

僕は部屋に行くと、ドアを閉めた。そしてノートを広げ、ペンを取った。

∠僕をθとすると、飛鳥と高端の距離(普通に仲がいい)÷僕と高端の距離(実は結構近いのかもしれない)=sinθとなる。

飛鳥と高端の距離÷僕と飛鳥の距離(不明)=cosθ。sinθ÷cosθ=tanθなので、仲がいい÷結構近い(だいたい同じようなもの=1)を仲がいい÷不明で割ったものが、僕と飛鳥の距離÷飛鳥と高端の距離となる。

「えっと、ここがこうだから…。」

計算を進めて行くうちに、僕はある結論に至った。

僕と飛鳥の距離は、かなり仲がいい、ということだ。

喜ぶべき結果のはずだが、僕は満足はしていなかった。

今の状況で「かなり仲がいい」ならば、もう伸びしろがあまりない、ということだ。

つまり、今の状況からあまり進展しない、ということ…。

どうすればいい?

僕と飛鳥との距離がもっと近くなるためには、僕は何をしたらいい?

答えのない質問だということは、僕を含めた誰の目にも明らかなはずだ。

それでも、僕は知りたかった。だが僕は飛鳥に呼ばれ、思考を中断せざるを得なくなった。