そして、長い沈黙ののちに答えは返って来た。だがその最初の一言は、僕を驚愕させるには十分すぎるものだった。

「…嫌いに…なろうとしてました。」
「…えっ…?」
「…これから、最短でも一年間は、離れてしまうんですよね…。その間、大切な人に会えないと思うと寂しくて…。

だから私、太陽さんのことを嫌いになろうとしたんです。嫌いになったら、離れるのも辛くないから。

…でも、距離を置いてみて改めて気づいたんです。私…やっぱり太陽さんと離れるのは無理だって。距離を置きたくないんだって。嫌いになりたくなんかないんだって。

それでも、何とか距離を置かないとと思って、太陽さんと話したり、一緒にいたりする機会を極力少なくしてみました。だけど私…やっぱり太陽さんと一緒じゃなきゃ嫌なんですっ…!」

飛鳥の肩は、明らかに震えていた。人工の空調に、涙が溶け込むように落ちて行く。

僕は飛鳥を、今までにないほど強く抱きしめた。僕が飛鳥の体に腕を回すと、飛鳥も僕に同じことをした。

「泣きたかったら、泣いていいよ。…我慢してたんだよな。偉いじゃん。」

僕は飛鳥の頭を撫でた。この光景を、誰も見ていないのが幸いだった。

「…太陽さん。」
「ん?」
「これからも…傍にいてくれますか?」

僕は迷わず答えた。

「どう頑張っても、飛鳥と離れるのは無理そうだな。」

直接言うのが恥ずかしかったとはいえ、少しキザだっただろうか。でも、これでも飛鳥には十分伝わった。そのはずだ。