目が合う。気まずくなって、下を向いてしまう。そのまま、お互いに何もしない。どちらも、何も言わない。どちらも、歩き出そうとしない。

「…廃部だってさ、文芸部。」

このまま止まるのは嫌だった。僕はどうにか、話題を切り出した。

「…何となく、予想はついてました。」

飛鳥の声が、いつもより増して小さく聞こえたような気がした。

「何してるんですか?」
「…今来たところだから。」

僕が返答する。再び沈黙。背筋を、嫌に冷たい汗が垂れて行く。飛鳥を直視できない。直視したら、今よりも関係がこじれてしまいそうだった。

「…あのさ。」

僕は、後で思い出してみても恐ろしくなるようなことを聞いてみた。何故この時こんなことを聞けたのかは、今となっては分からない。だが恐らく、僕は飛鳥の心を確かめたいという一心で、行動に移したのだろう。

「…僕のこと、避けてる?」
「…。」

何なんだ、この間は。何か答えてくれ。僕は必死で、届くはずのない願いを心の中で何回も唱えた。

でも、案の定答えは来ない。

僕はさらに恐ろしいことを聞いた。

「僕のこと…嫌いになった…?」
「…。」

再び、間。いい加減にしてくれ。何か答えが出てくれないと、僕はこのままずっと、心の中で底なし沼にはまったまま残りの長い長い人生を生きて行くことになる。