飛鳥が、ものすごいスピードでペンを走らせた。

部室に、かつてないほどペンの音が激しく鳴り響く。

「…神。」
「月夏を驚かせるなんて…飛鳥ちゃん、何者…?」

十秒ほどで一枚書き上げたかと思えば、それを手で払いのけて、また一枚。ひらひらと一枚目が舞う。

「ちょっと見せてね…。」

加賀が一枚目を拾い、文章に目をやる。その瞬間、加賀の目の色が変わった。

「すごい…。」
「ん?」
「飛鳥ちゃん…めっちゃ書くの上手いよ!」

原稿用紙の前に、こぞって部員達が集まる。僕も、飛鳥の話が見たくて原稿用紙を覗き込んだ。

「おいおい、マジか…。」

正直言って、この部活の誰よりも上手だった。

つかみも設定も、とにかく全てが上手だった。

その間にも、飛鳥はやはりものすごいスピードで書き進めていく。僕は圧倒されていた。それと同時に、飛鳥の才能を見た気がした。