「あの…さ。」
「ん?」
「今の安堂にこんなこと言うのもアレだけど…一緒に、お昼食べない?」
「…おう。」

思えば、飛鳥と昼食を取らないのはかなり久しぶりだ。飛鳥と出会う前の学生生活に戻ってみるのも、悪くはないかもしれない。

飛鳥に距離を置かれていると分かって、僕は若干ヤケになっていた。…それくらい、飛鳥のことを考えていた、ということか…。

「じゃーん!」

高端が弁当箱を開ける。色とりどりの食材がキレイに並べられ、見た目からしてとても美味しそうだ。

「自信作だから、誰かに見せたくなって。どう思う?」
「ん…いいと思う。何か『体育祭』って感じだけどな。」
「どういうこと?」
「こんな張り切った弁当を作ってくるのって、体育祭の時くらいだと思うんだけど…。」
「そうかな…。これで普通じゃない?」

…女子力というのは、上限を知らないらしい…。

「安堂はいいよね…。」
「何が?」
「だって、お昼は飛鳥ちゃんが作ってくれたお弁当なんでしょ?」
「まぁ…な。」
「いいよね、本当。彼女の愛情弁当って言うか?」
「愛情弁当ってわけじゃないって…。」
「じゃあ…飛鳥ちゃんの気持ちが入ってるから、飛鳥ちゃんの…彼女のカケラってとこかな?」
「何だよ、その例え…って言うか、そもそも飛鳥は彼女じゃないし…。」
「え、そうだったんだ?」

高端というハトは、小さめの豆鉄砲を食らっていた。

「何だ…だったら、もっと早くに言ってたらよかった…。」