「飛鳥。」

僕はいつもの距離感で飛鳥に近づき、名前を呼んだ。だが…。

「あ…。」

飛鳥は席を立ち、教室を出て行ってしまった。

僕は当然飛鳥を追おうとしたが、僕自身のストッパーが足を止めた。果たして、それが飛鳥のやってほしいことなのか、と。

僕は僕自身に反駁できないまま、自分の席に戻った…。

昼休みになっても、状況は変わらなかった。

「飛鳥?」

いつも昼食を食べている屋上に行ってみたが、そこに飛鳥の姿はなかった。

「…どこ行ったんだ…?」
「教室で見たよ。」

振り返ると、そこには高端がいた。

「本当か!?」
「うん。」
「サンキュー、高端。行ってく…。」

教室に戻ろうとした僕の腕を、高端の手が掴んだ。

「え?」
「…多分、飛鳥ちゃんは来ないでほしいんだと思う。」
「どういうことだ…?」
「…距離を置いておきたいんじゃないかな…。」

ショック以外の何物でもなかった。

飛鳥に「距離を置きたい」と言われているんだとしたら…僕の思いは、モヤモヤした段階で断ち切られることになる。