翌日。

「キーン、コーン、カーン、コーン…。」

チャイムが鳴る。

「えー、もうすぐ卒業式ですが…。」

先生の話なんて、僕の耳にはその半分も届いていなかった。

結局、昨日はあれから一言も飛鳥と話していない。と言うより、帰るとすぐ、飛鳥がどこかへ行ってしまったのだ。

僕は追おうとしたが、やめておいた。もし飛鳥を変なタイミングで呼び止めたなんてことになったら、気まずいを通り越して、僕の心に「やってしまった」という傷跡が一生残ることになる。

朝になっても、飛鳥は帰ってこなかった。

仕方なく一人で学校に着くと、飛鳥の席に、飛鳥のカバンが置いてあった。

飛鳥は、来ていた。そして、今も教室にいる。

…だが、この感情は一体何なんだ?

飛鳥が、遠い存在に感じられる。まるで、特別な関係を持たない、ただのクラスメートになってしまったような、そんな気分だ。

こんな状態で、先生の話なんてまともに聞けるはずがない。

「…連絡は以上です。」
「起立。」

気がつけば、先生の話は終わっていた。日直が号令をかける。

「礼。」

僕は形だけの礼をすると、そのまま席に座った。

「何してんの?」

後ろから声がする。振り向くと、高端がいた。