「ねえ、おれのどこが好きなの?」


女の子がびっくりした顔をした。まさか、そんなことを訊かれるなんて思ってなかったって感じ。

そりゃそうだとは思うよ。おれも、こんなの訊くの初めてだし。

おれのどこが好きなの?

いつも、思ってたことではあるんだけど。


「えっと……かっこよくて、物静かなところとか、冷静なところとか……他の男子と違って大人っぽくて、ずっと、憧れてて」


女の子が、恥ずかしそうにもじもじしながら一言一言探すようにして答えた。

顔をより一層真っ赤にして。たぶん、うそじゃないんだろうな。この子はおれのこと、本当にそういう風に思って好きになったんだ。


「でもおれ、全然違うよ」


女の子が顔を上げる。さっきと同じ驚いた表情を浮かべたけれどちょっとだけ雰囲気が違うのは、怪訝そうな様子が、そこに含まれていたせいだと思う。


「そういう風に思うのは、たぶんおれが好きなこと以外に興味がないからだよ。だからわりと自己中心的だし、それに話すの苦手でつまんないと思うし、結構おれって、顔だけっていうか」


本当に、いいところ全然ないんだけど。かっこよくもないし、大人っぽくもないし、憧れられるような人でも全然ないんだ。

本当のおれは、そんなんじゃない。


「きみの思ってるおれとは違うよ」

「それでもいいから……付き合ってください!」


緊張で、声を裏返して。頭を下げる、小柄で可愛い女の子。

一生懸命なその姿を、じっと見て、少し、考えてみるけれど。

返す答えは本当は、最初から、決まっていた。