お医者さんからは、安静にしていれば生活に支障がないくらいには回復するって言われた。

でもそれじゃだめなんだ。あたしは走らなきゃ。立ち止まるわけにはいかないから。

夢を叶えるために。世界をもっと広げるために。


なのに足がまったく思うように動かない。動かそうとすれば感じたことのない痛みが体の全部を突き抜ける。

歩くだけでこれだけ辛い。走るなんてとても無理だ。

それでも無理やり動かした。無理やり動かして意地でも走った。


100のゴールは切れなかった。数歩走っただけで倒れたあたしを、高良先生や部活のみんなが、泣きながら、止めていた。


……なんでだろう。どうしてなんだろう。

どうしてあたし、走れないの。


世界広がらない。羽も生えない。空は遠いよ。見えてるの、地面だけ。


なんでなの、走れないわけないじゃん。だってそれだけが、あたしのすべてなのに。


真っ直ぐで大きな光。眩しい綺麗な世界。


走りたいんだよ、もっともっと。もっと走れるはずなの。

痛みなんて関係ないよ。速く走るためだったら、あたしなんでもするって決めてるの。


誰かからの祝福とか、期待とか、そんなのはもうどうでもいい。

あたしはあたしのために。あたしの夢のために。

あの綺麗な世界を、もっと、広げるために。走るんだ。