“慣れ”というのは怖いもので
好きなアイドルの話や
クラスで気に食わないヤツの話…
他愛のない会話をそれぞれ
繰り広げながら歩く事数分。
不気味に思えた夜の森にももう
恐怖や緊張感というものは
私達には感じなくなっていた
そんなときだった
「あれ、なぁに?」
美愛が指差す方へ一同が視線を向ける─…
「祠ね、随分古そう…でも、しっかりした造りになってるわ。」
そう話すのは漆山さん
「美愛、こわぁい…本当に出てきそぉ。羽音、手握ってぇ?」
「美愛、祠っていうのは神様が祀ってある場所なのよ?何がこわいのよ。」
「だってぇ…」
「仕方ないわね、ほら。」
そして手を握る2人─…
漆山さんて、以外と面倒み良いんだな…
こうしていると、知らなかった皆の一面が見えてくる
「これ、ただの祠じゃねぇな。生祠じゃねぇか」
弘幸が発した言葉に皆が驚いた
「生祠?」
「あぁ。在命中の人間を“イキガミ”として祀ってるんだよ、この辺りじゃ珍しいな」
「在命中って…生きてる人間を?」
「それって生きたまま埋められちゃうってこと?」
「そんな訳ないでしょ。皆、祠をなんだと─…」
「いや、有り得ない話じゃねぇぜ?
さっきも言ったが、この辺りじゃ生祠どころか祠がある事すら珍しいんだ。あの時代、この地域で生祠といったら、間違われた文化が根付いてただろうな。」
あ…
「そういえば…私も聞いたことある。昔は、障害をもって生まれた子供は“イキガミ様”つまり、神様の元へ返すという意味で生き埋めされるのは珍しくなかったって…だから祠を見かけたらお祈りしなさいって、父方の実家のおばあちゃんがよく言ってた。てか…なんか弘幸、詳しいね」
「まぁな…」
「とりあえず、皆でお祈りしよっか」
百合の言葉を合図に、一同合掌…
…
……
………
「きぁあああぁぁぁぁぉあァアアアアア─────────ッッッッッッ!!!!」
静まり返る空気を引き裂く悲鳴が当たりを包み込んだ



