Snow＆Cherry

「……僕が今、何考えてるかわかる？」

すると、ハルはオレの心を読んだかのように、そう言った。
オレが仕方なく首を横に振ると、ハルは指をパチンとならして、にっこり笑った。


「誘惑って、多田明日香にぴったりだなーって思ってたの。
アイツがサクラをいじめた理由、教えてあげようか？」



多田が、佐倉をいじめた理由。
そんな事、今まで気にしてなかった。
でも…………。


「……あぁ。」


知りたい。
どうしてハルは、こんなにも多田を恨むのか。
いじめは悪かった。
しかし…………。



「多田はね。サクラを利用したんだよ。自分がクラスのトップになれる、という、誘惑に負けたんだ。」



ハルは、馬鹿にしたように言った。

多田は確かに、中一の時はクラスの中間だったんだ。
別に下じゃないけど、上でもない。
どっちかと言えば、佐倉の方が上だった気がする。
でも、佐々木と絡みだしてから、あいつは急に位が高くなった。


「いじめはしちゃいけないなんて綺麗事より、自分が上になることを優先した。
サクラの気持ちより、自分を選んだんだ。」


ハルが一番最初に多田を選んだ理由が、少しわかった。
多田は佐倉を利用した。
だから、ハルも多田を利用した。



多田を殺せば、その周辺は皆「次は自分かもしれない」と思うだろう。
多田の死は、プロローグに過ぎない。


多田の死から、この物語は始まる。