「あ!」
中川が慌てて振り返る。
「どけー!」
痴漢は叫びながらホームに立っている人にぶつかりながら必死に逃げて行く。
「また逃げるなんて!もう絶対許さない!」
亜優美も咄嗟に気付き、追いかけ始める。
「その人は痴漢です!誰か捕まえて下さい!」
亜優美の叫び声も駅のホームに響き渡る。
「キャー!」
痴漢がなりふり構わず逃げる為、ぶつかったOL達が倒れながら悲鳴を上げている。
(誰かいる。)
やがて、亜優美は痴漢の先に仁王立ちで立っている人物が目に入った。
「その人、痴漢です!」
痴漢は前で立っている人物にもお構いなしに向かっていく。
「どけー!」
「危ない!」
痴漢と、その人物が当たる瞬間、思わず亜優美は目を逸らした。

