落合橋駅から走り出してすぐに再び触られる感触に襲われた。
亜優美は落合橋駅で余裕が出来た際に右手を腰の横に下ろしている。
待ち針を握りしめて。
『ご乗車お疲れ様でした。森本1丁目に到着いたします。』
アナウンスが流れ、電車が減速を始めても痴漢を止める気配はない。
(よし。)
亜優美は左側に立っている合田に目で合図を送った。
痴漢の手を待ち針で刺すサインだ。
刺した事によって声を上げる人物、その人物こそが痴漢の正体だ。
合田も黙って頷く。
亜優美はゆっくりと握っていた待ち針を持ち替えて、触っている手に向かって思い切り突き刺した。

