『出発いたします。次は森本1丁目、森本1丁目です。』 (いよいよ勝負だ。) 中川の表情が一層厳しくなる。 電車が走り出し、亜優美の背後には桜町駅から引き続いて、紺のスーツを着たサラリーマン、グレーのスーツを着たサラリーマンが立っている。 (どっちだ?) 密着している亜優美の下半身に目を移す。 (駄目だ、見えない。)