「僕の名前は中川直樹。いつもこの駅で降りてすぐ近くで働いているんだ。」
「中川、さん…。」
ウルウルとした目で見つめてくる亜優美に中川は困惑した表情を崩さない。
「本当にもういいから。気にしてないから。」
「中川さん、失礼ですが、ご家族は…。」
「妻と、5歳と3歳の娘がいるけど…。」
何故、家族構成を聞かれたのか分からない。
(私は、幼い娘さんを2人も持っているこんな優しい人を痴漢にしようとしていた…。)
(もし、中川さんが捕まって、幼い娘さんに不幸が訪れてたと思うと…。)
そう思い始めると、また亜優美の目に涙が溢れる。
「やれやれ。」
ついには中川も呆れてしまった。

