女性は持っていたハンカチで左膝を押えている。
「あの…。」
俯きながら亜優美は駆け寄ってきた男性に話しかけた。
「本当にごめんなさい!」
深々と頭を下げる。
「昨日、痴漢だなんて騒いで…。本当は違うのに。本当に本当にすみませんでした。」
きっとかなり怒っているだろう、と思いながら恐る恐る男性の顔を見上げる。
けれど、その男性は意外にもニコニコしていた。
「気にしてないから。痴漢じゃないって分かってくれたら、それでいいから。」
「そんな…。」
余りの優しさに亜優美は逆に頭を上げる事が出来なくなった。

