私の彼ってサイテー。というより、元彼なのだが。

 今日の夕方、そいつが私のことを「オメーなんかと付き合うんじゃなかった」と言ったのだ。だから私は、そいつの頬を思いっきりひっぱ叩いてやった。その時そいつは、少し後退しうろたえて、まるで子羊がわめくように鳴いた。そして私はその迷える子羊を白い目で見た後、早足でその場を去った。

 結果的には私が振った形となったが、私は彼のことが好きだったのに、その彼の一言を聞いて、急にその感情は冷めた。

「そうだ」私は今、自分のしたいことが分かった。それは単にあいつのことをきれいさっぱり忘れようと思ったのだ。そしてまず、メルアドの変更を思いついた。

 携帯を手に取り、すぐにメルアドの変更をした。どんなメルアドがいいだろうか。どうせなら自分の好きな言葉を入れたい。

「これでよし、と」なんだか少し、自分の気持ちが吹っ切れたようであった。もうあいつとの縁は無いと思うと、すがすがしくなってくる。

 そして友人らにメルアドの変更を伝えるメールを打ち始めたところ、突然携帯が鳴り始めた。画面はメールの受信に変わり、私に不信感をも与えた。携帯のバイブと共に、部屋に着信音を鳴り響かせた。

 その受信箱を開くと、題名に「捨てないでくれ」とあった。何、今更、と私は思ったが、やつにはこのメルアドを教えていないし、教える気もなかった。しかしこのメールはなんだろう。なんだか気持ち悪い。

 私はそのメールをどうするか考えた。捨てるか、もしくは開けてから捨てるか。しかしもし開けたら、またあいつに惹かれる可能性がある。それだけは避けたかったが、やはり今のあいつの心境を知りたく、そのメールを開けることにした。

 そのメールには「俺が悪かった。またよりをもどしてくれ」とあった。ふとそのメールの上のほうを見ると、送信者は誰だか分からなかった。ということは、これはあいつからのメールではない。よくよく考えると、あいつがこんな単純な文章を書けるはずが無い。あいつからのメールではないとしたら、誰のメールだろうか。まさか迷惑メールではないだろうか。

 私は少し身震いをし、そのメールを削除することを決断した。